かつて深夜帯まで多くの若者や家族連れで賑わっていたSASYU鎌田店が、なぜ幕を下ろす決断に至ったのか。運営元である株式会社佐周の歩みと、地方出版流通を取り巻く構造変化を読み解くと、単なる一店舗の撤退にとどまらない産業構造の地殻変動が浮き彫りになります。
第一の要因は、出版市場全体の電子書籍シフトとネット書店の浸透です。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所のデータが示す通り、紙の出版市場は2000年代をピークに縮小の一途をたどっています。特に雑誌やコミック、文庫本といった「衝動買い」「定期購読」を支えていた基幹ジャンルがスマートフォンへ移行した影響は、ロードサイドの大型書店ほど直撃しました。
第二の要因は、郊外型メガ書店のビジネスモデルの限界です。SASYU鎌田店は広大な売り場面積と充実した駐車場を備え、TSUTAYAチェーンとの連携によるレンタルや文房具販売など多角的な集客を図っていました。しかし、動画配信サブスクリプション(Netflix、Amazonプライム・ビデオなど)の普及によってレンタル需要が蒸発。広い坪数を維持するための賃料・光熱費・人件費といった固定費が経営の重荷となっていきました。
佐周グループはその後、経営資源の選択と集中を進めました。学校への教科書納入や外商部門、駅前や中核拠点(西口ピボット店などの展開)へのシフトを行い、収益構造の抜本的改革を実行した経緯があります。鎌田店の閉鎖は、衰退による突然の瓦解ではなく、地域カルチャー企業の生き残りをかけた極めて合理的かつ冷徹な「戦略的撤退」であったと言えます。