インターネット上の言説において、極端な恐怖を煽るものと無警戒な過小評価に二極化しているのが「青梅の毒性と注意点」です。ことわざに「梅はその日の難のがれ、青梅は食うて閻魔(えんま)行き」とある通り、生の青梅には毒素が存在します。
食品安全委員会や農林水産省の公的データによると、青梅の果肉や種子(仁)には「アミグダリン(Amygdalin)」と呼ばれる青酸配糖体が含まれています。この成分自体は無毒ですが、咀嚼や果肉の破壊によって梅自身の持つ酵素(エムルシン)と接触し、あるいは人間の体内に入ると腸内細菌の酵素によって分解され、猛毒であるシアン化水素(青酸)を発生させます。未熟で硬い青梅の生食が厳禁とされる科学的理由はここにあります。
しかし、過度な恐慌に陥る必要はありません。アミグダリンは、アルコールへの浸漬、砂糖漬けによる浸透圧脱水、あるいは熱処理や長期熟成の過程において、酵素作用および化学反応により無害な物質(ベンズアルデヒドやブドウ糖など)へと完全分解されます。食品衛生学の実験結果でも、仕込みから3ヶ月以上経過した梅酒や梅シロップからはシアン化合物の毒性が消失していることが確認されています。幼児が誤って生の青梅を丸かじりするような偶発事故には厳戒の注意が必要ですが、適切に工程を踏んだ加工品を摂取する分には人体への毒性リスクは事実上皆無です。