ニッチローのキャリアを語る上で避けて通れない最大の事件が、2011年8月に米シアトルのマリナーズ本拠地(当時のセーフコ・フィールド、現T-モバイル・パーク)で発生した観客席からの即時退場処分、いわゆる「出禁騒動」です。
当時、イチロー氏の完全なレプリカユニフォームとスパイク、サングラスを着用して右翼席最前列で観戦していたニッチロー。事件はマリナーズの守備中に起こりました。ライトフェンス際へ飛来したファウルボールに対し、守備についていたイチロー氏よりも先に、客席のニッチローがグラブを差し出して見事にキャッチしてしまったのです。
この瞬間、球場内のビジョンには「イチローのそっくりさんがボールを捕球した」様子が大写しとなり、現地の地元テレビ中継の実況席も大混乱に陥りました。しかし、MLBの公式ルールにおいて「インプレー中のボールに観客が触れる行為」は重罪です。審判団の判断により妨害行為とみなされ、ニッチローは即座に屈強な警備員たちに取り押さえられ、球場外へ連行・強制退場となりました。
一部のネットメディアでは「MLB全土から永久追放(永久出禁)になった」と誇張されて拡散されましたが、これは事実と異なります。当時の球場セキュリティによる処分はその日の試合における「即時退場」であり、悪質な妨害意図がなかったこと、本人が深く反省し球場側の指示に素直に従ったことから、刑事告発や恒久的な立ち入り禁止措置には至りませんでした。後年、ニッチローは正規のチケットを購入して再び同球場を訪れ、客席からイチロー氏へ熱い声援を送る姿が報じられています。