爬虫類業界で「魔の3ヶ月」と称されるのは、生後直後から生後90日前後(全長15〜20cm未満のベビー期)を指します。この時期を無事に越えてヤング期に突入すると、体力がつき環境適応力も急激に高まりますが、それまでは極めてデリケートな生命維持状態にあります。突然死を引き起こす主な理由は以下の3点に集約されます。
第一に、消化器官および体温調節機能の未熟さです。フトアゴヒゲトカゲは外気温を利用して代謝を行う変温動物ですが、ベビーは体格が小さいために外気温の変化をダイレクトに受け、内臓温度を一定に保つことが困難です。十分な熱を得られないまま餌を胃袋に入れると、消化管内で餌が腐敗・異常発酵を起こし、自家中毒や敗血症を招きます。
第二に、体内寄生原虫(特にコクシジウム)の爆発的増殖です。多くの個体が母体や流通段階で微量の原虫を保有していますが、環境変化によるストレスで免疫力が低下すると、腸内でコクシジウムが一気に増殖します。これにより重度の腸炎、激しい脱水、栄養吸収不全が引き起こされ、目に見える衰弱からわずか数日で死に至ります。
第三に、被捕食者としての本能による「体調不良の隠蔽」です。野生下において弱みを見せることは外敵に捕食されることを意味するため、爬虫類は限界ギリギリまで通常通りに振る舞います。飼育者が「元気がない」「目がくぼんでいる」と異変に気づいた段階では、すでに生体機能が末期的な破綻を迎えているケースが少なくありません。