加賀翔という人間の底知れない奥行きを語る上で欠かせないのが、岡山県備前市で過ごした幼少期の生い立ちと実家の環境です。両親の離婚、破天荒で時に暴力的な振る舞いを見せた実父との複雑な関係など、決して平穏とは言えない環境で育った過去を持ちます。
その壮絶な体験を、決して被害者意識に逃げることなくユーモアと切なさを交えて書き上げたのが、2021年に刊行された私小説『おおあんごう』(文藝春秋)です。タイトルの「おおあんごう」とは岡山弁で「大馬鹿者」を意味し、不器用ながらも必死に生きた父親と自身の葛藤を鮮烈な筆致で描き出しました。この作品は文壇からも絶賛され、加賀の作家としての才能を世に知らしめる決定打となりました。
さらに、加賀のもう一つの大きな武器となっているのがカメラ・写真の腕前です。舞台袖や楽屋という極めてクローズドな空間で、芸人仲間が見せる無防備な表情や熱気あふれる瞬間を捉えたポートレートは、被写体との深い信頼関係がなければ撮れない傑作ばかりです。自身のSNSに投稿される写真は瞬く間に拡散され、大手カメラメーカーとのタイアップ企画や単独写真展の開催にまで発展しています。