小学館『月刊flowers』で連載され、2013年にマンガ大賞を受賞した吉田秋生の最高傑作コミック『海街diary』(全9巻)。映画化にあたり、是枝監督は原作への深い敬意を払いつつも、2時間8分の劇場版として見事な再構築を行いました。
最大の相違点は、「取り扱った物語の範囲と登場人物のフォーカス」にあります。映画版では主に単行本の第1巻から第4巻までのエピソードを抽出し、「すずが鎌倉の家に迎え入れられ、四姉妹としての絆を確立するまで」に物語の軸を絞り込んでいます。そのため、原作後半で深く描かれるすずの中学卒業後の進路問題や、次女・佳乃の仕事面での大きな成長と自立、三女・千佳の恋人である浜田店長(ヒマラヤ登山で足の指を失った青年)をめぐる重厚なエピソードは、映画版では簡潔なニュアンスにとどめられています。
また、大人たちの心理描写にも絶妙な映画的アレンジが加えられました。実母でありながら娘たちを捨てた都(大竹しのぶ)と、頑なな長女・幸の衝突、そしてそれを見守る大叔母・菊池史代(樹木希林)の存在感は、名優たちの丁々発止のやりとりによって、原作以上に「血縁の業(ごう)と赦し」を強烈に浮き彫りにしました。