物語の主人公である壱岐正。大本営参謀として終戦工作に携わり、敗戦後は11年にも及ぶ過酷なシベリア抑留に耐え抜いた末、商社という新たな戦場へと身を投じた男だ。この凄絶な半生を歩んだ男のモデルとされているのが、旧日本陸軍の参謀であり、後に伊藤忠商事の会長へと登り詰めた実在の人物・瀬島龍三である。
瀬島氏は、大本営の要職を歴任したミリタリーエリートでありながら、復員後は商社マンへと転身。冷戦下の国際情勢を冷徹に見極め、独自の情報網を駆使して巨大なビジネスを次々と成功させた。中東の石油権益獲得や次期戦闘機(FX)の選定作業、さらには大手自動車メーカーの提携工作まで、政界と財界をまたぐ闇の交渉劇の裏には、常に彼の影があったと言われている。