これほど特異な肉体を持つ魚となると、「果たして食べられるのか?」「どんな味がするのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。
結論から言うと、ブロブフィッシュやニュウドウカジカに毒性はなく、理論上は食用可能です。しかし、商業目的で漁獲・流通することは一切ありません。実際に深海調査やトロール網の混獲で手に入れた研究者や漁師の試食レポートによると、身の大部分が水分とコラーゲン質の塊であるため、「加熱すると溶けて縮み、無味無臭の水っぽいゼリーを食べているようだ」「ほのかな甘みはあるが、独特の泥臭さと磯臭さがあり、美味とは言えない」という評価が定着しています。食用としての経済価値は皆無と言えます。
また、「生きた姿を日本の水族館で見ることができるのか」という点についても、飼育のハードルは極めて高いのが実情です。オーストラリア周辺に棲むブロブフィッシュは生体展示の記録がほぼありませんが、日本近海産のニュウドウカジカであれば、「アクアマリンふくしま」や「沼津港深海水族館」などの深海展示に特化した施設で、捕獲時に限定的な特別公開が行われた実績があります。
ただし、深海から生きたまま引き揚げる減圧プロセスは極めて難しく、水温管理や暗黒環境の再現を行っても数日から数週間で命を落としてしまうケースがほとんどです。現在水族館で見学できるものの多くは、丁寧にホルマリン固定された液浸標本や、本来の海中での姿を精密に再現した3D模型となっています。