日本におけるウイスキーの消費風景を語る上で、ノスタルジーと現代カルチャーの交差点を見逃すわけにはいかない。かつて高度経済成長期のスナックで親しまれた水割り文化を塗り替え、軽やかな喉越しとともに若い世代を捉えたのが、カウンター越しに井川遥が微笑むあの鮮烈なテレビCMだった。彼女が差し出すグラスの中で揺れていた琥珀色の液体と黄色いスライスの鮮烈なコントラストは、大衆酒のイメージを瀟洒な日常へとアップデートした立役者だ。
さらに、漫画やドラマで国境を越えた共感を呼んだ『深夜食堂』の路地裏でも、ハイボールは人と人の孤独をそっと繋ぐ触媒として描かれてきた。決して気取った酒ではない。しかし、粗雑に扱ってはならない。世界的な基準で見ればれっきとしたウイスキーカクテルでありながら、赤提灯の暖簾から深夜の止まり木まで、生活のひだに寄り添う親密さを失わない点に、この飲み物の真髄がある。