トップジョッキーの受験は常に競馬サークルの耳目を集める。かつて名手として競馬史に名を刻んだ蛯名正義が幾多の苦闘の末に合格をもぎ取り、福永祐一が鮮烈な引退とともに一発合格を果たして厩舎を開業したのは記憶に新しい。彼らのようなスーパースターであっても、試験室に入れば特別な下駄を履かされることは一切ない。
むしろ騎手という職業柄、現場の感覚を論理的な言葉や科学的根拠に置き換える作業には並大抵ではない労力が伴う。「乗って分かること」を「誰もが納得する調教プラン」へと翻訳する能力。騎手時代に培った勝負勘に、経営者・管理者としての知性を融合させた者だけが、名伯楽への切符を手に入れることができる。