父親の本名はロバート・H・トーガソン(Robert H. Torgerson)。米軍の膨大な公文書記録、除隊名簿、そして現地調査員の執念の足取りによって、その生涯が克明に辿り直された。ロバート氏は軍を退役後、ノースカロライナ州で家庭を築き、2013年に83歳でこの世を去っていた。
取材班は現地でロバート氏の実妹、すなわち草刈にとっての叔母にあたるジャニタさんと接触に成功する。彼女の部屋には、若き日のロバート氏の写真が飾られていた。そこに写っていたのは、彫りの深い目元、柔らかな微笑み、そして草刈正雄その人と見紛うばかりの容貌を持つ青年の姿だった。叔母は涙ながらに語った。「ロバートはずっと日本に残してきた息子のことを気にかけ、愛していた」と。その一言が、草刈の胸に刺さっていた長年の棘を優しく溶かしていった。