物語の軸となるのは、難聴を患ったことで周囲と距離を置くようになった大学生・杉原航平と、底抜けに明るくまっすぐな佐川太一のふたりだ。食事を通して心を通わせていくふたりの関係は、友人でもあり、互いの欠落を埋め合う特別な存在でもある。
ふたりを取り巻く周囲の人間関係もまた、重層的だ。太一の良き理解者である友人たちや、航平の抱える孤独を静かに見守る家族、そして大学のキャンパスで行き交う同級生たち。それぞれが異なる価値観を持ちながら、航平と太一が築く「ふたりだけの居場所」に波紋を広げていく。相関図を読み解くほど、一人ひとりのセリフの裏に隠された意図や、視線の交差が持つドラマ性が浮き彫りになる。