現場取材を進めると、頭皮トラブルを抱える現代人の多くが「自分は脂性肌(オイリー頭皮)だから、保湿などしたら余計にギトギトになる」と信じ込んでいる実態が浮かび上がってきます。大手コスメアプリや美容相談室に寄せられる生の声を検証しても、「夕方になると頭頂部が脂臭いのに、側頭部を引っ掻くと粉を吹く」「フケが出るからフケ取りシャンプーで1日2回洗っているのに止まらない」という悲痛な叫びが散見されます。
これこそが、皮膚科学でいう「頭皮の皮脂と乾燥の真相」――すなわち、インナードライ(皮脂分泌過剰型乾燥肌)の罠です。
頭皮の角層水分量が20%以下に低下すると、脳の皮膚防衛シグナルが作動し、「角層が剥がれ落ちるのを防ぐために皮脂を大量分泌せよ」という緊急指令が皮脂腺に出されます。その結果、内部はカラカラに干からびているにもかかわらず、表面だけが皮脂で覆われるという歪なアンバランスが生じます。
ここで決定的なのが、「頭皮乾燥フケ対策」におけるフケの見極めです。多くの人が白っぽい剥がれ落ちた角片を見て一括りに「乾燥フケ」と判断しますが、フケには2つの全く異なるタイプが存在します。
パラパラと肩に落ちる微小な「乾性フケ」であれば純粋な水分不足が原因ですが、やや大ぶりで湿り気を帯び、爪に白く詰まるような「脂性フケ」の場合、過剰な皮脂をエサにして頭皮常在菌のマラセチア菌が異常増殖している証拠です。インナードライを放置して表面の皮脂を放置するか、あるいは乾燥対策と称して油分たっぷりのオイルを塗り重ねると、マラセチア菌が皮脂を遊離脂肪酸へと分解し、それが強い刺激となって激しいかゆみと炎症を引き起こします。自らのフケの性状を見極めずに行う自己流保湿は、火に油を注ぐ行為にほかなりません。