日本人がメジャーリーグの投球トレンドを肌で体感した最初の衝撃は、元広島東洋カープ・ニューヨーク・ヤンキースの黒田博樹投手によるツーシームでした。黒田氏は自著や引退後の解説でも「アメリカの硬いマウンドと動くボール文化の中で生き残るための生命線だった」と述懐しています。
黒田投手のツーシームは、右打者の外角ボールゾーンからストライクゾーンへ滑り込ませる「バックドア」、逆に左打者の内角ボールから見逃しを奪う「フロントドア」という高度なコマンド(制球力)によってMLB屈指の評価を獲得しました。
一方、近年の投球スタイルを象徴するのが大谷翔平選手が投じる160km/h超の高速ツーシーム(シンカー)です。大谷選手のツーシームは、凄まじい球速と横への急激なスライドを両立しており、反対方向に大きく曲がる「スイーパー」と組み合わせることで、打者から見れば左右に30〜40cm以上の軌道ギャップが生じます。このピッチデザインにより、打者はどちらか一方を完全に捨てなければ対応できない極限の駆け引きを強いられています。