ネット上の掲示板や知恵袋などでは「個人情報保護法があるため、病院に電話されても『患者の情報は答えられません』と突っぱねられるからバレない」という危険なデマが流布されています。しかし、企業の人事労務担当者や顧問弁護士は、そうした法律の建前を完全に熟知した上で、合法的に外堀を埋めていきます。
企業が実際に用いる確認の手口は極めて精緻です。提出された診断書にわずかでも不審点(フォントの乱れ、押印のにじみ、医師名の肩書表記の不自然さ)があれば、会社は従業員に対して「医療機関への受診事実確認に関する同意書」への署名・捺印を求めます。就業規則に基づき、正当な労務管理の一環として同意を求められた従業員がこれを拒否した場合、その時点で「提出書類の信憑性に重大な疑義がある」として出勤停止や調査対象となります。
同意書を取り付けた企業は、医療機関に対してカルテ番号(診療録番号)と受診日の一致を正式に照会します。医療機関側も、本人の同意書が提示されれば個人情報保護法第27条の例外事由に該当するため、「該当日に受診事実はありません」「その医師はすでに退職しています」「当院の印影とは異なります」と回答せざるを得ません。この瞬間、言い逃れの余地は完全に断たれます。
人事担当者が不審を抱く代表的な兆候は以下の通りです。
- カルテ番号・発行番号の欠落または異常:正規の医療機関が発行する診断書には必ず追跡用の一連番号が振られていますが、自作された文書ではこの整合性が崩れています。
- 医師名の登録情報不一致:厚生労働省の「医師等資格確認検索システム」で照会すると、実在しない氏名であったり、表記されている専門科と異なる医師名が記載されていたりするケースが多発しています。
- 病名と休業要請期間の医学的不整合:「適応障害により明日から即座に6ヶ月の完全休業」など、臨床経験のある産業医が見れば一目で違和感を覚える極端な記載内容が疑いの引き金になります。