確実な繁殖を目指す上で欠かせないのが、親魚が産卵床に産み付けた卵の適切な採取とトリートメントです。メダカ産卵床からの卵の取り方には繊細な技術が必要に見えますが、卵の生物学的性質を理解していれば誰でも安全に行えます。
まず、産卵床を飼育水から引き上げ、清潔な手のひらや濡らしたキッチンペーパーの上に置きます。卵の表面には「付着糸」と呼ばれる粘着性の高い糸が無数に絡み合っており、塊のまま放置すると内部の通水性が著しく悪化します。ここで恐れずに実践したいのが、指の腹で転がして確認する選別法です。
「指で押したら潰れてしまうのでは」と躊躇する初心者も多いですが、有精卵の卵膜は驚くほど強靭です。人間の指先で多少力を込めて押し転がした程度ではビクともせず、ピンポン玉のように弾力を保ちます。逆に、力をかけた瞬間に「プチッ」と潰れて液体が流れ出すものは、すべて受精に失敗した無精卵です。この作業によって付着糸を取り去り、卵を1粒ずつバラバラ(単粒化)にすることで、無精卵の破棄と通水性の確保が同時に完了します。
単粒化した有精卵は、水道水で薄めたメチレンブルー水溶液を張った浅いタッパーや隔離ケースに移送します。水道水に含まれる微量の塩素(カルキ)とメチレンブルーの静菌作用の相乗効果により、水カビ病の原因菌の増殖を完璧に抑え込むことができます。溶液の色合いは「透明な水色〜薄いスカイブルー」が理想であり、濃紺になるほど原液を入れる必要はありません。