多くのトレーニーが最も知りたがっている核心は、「その記憶は何年持つのか」という有効期限の問題です。結論から言うと、科学的な見地から見てもマッスルメモリーが10年、あるいはそれ以上持続するという仮説は極めて現実味を帯びています。
ヒトの筋線維における細胞核のターンオーバー(入れ替わり周期)は非常に緩やかであり、一度獲得された細胞核は少なくとも15年以上、場合によっては半永久的に筋肉内に留まる可能性が指摘されています。齧歯類を用いた実験では、実験動物の生涯にわたって細胞核が維持された例も報告されているほどです。もちろん、加齢によるホルモン分泌の低下や極度の栄養失調、全身性の疾患などが介在すれば話は別ですが、「健康な成人が数年休んだ程度」では、過去に手に入れた細胞核の資産が消失することはありません。
では、具体的にトレーニングを再開してから筋肉が戻る期間はどれくらいなのでしょうか。蓄積されたトレーニング年数と休止期間によって変動するものの、現場の実測値および臨床観察からは明確な傾向が掴めます。
一般的に、筋肉を元に戻すために必要な期間は「休止していた期間の約3分の1から5分の1」というのがスポーツ科学分野における実務的なコンセンサスです。1年間休んだ場合でも、適切な栄養と負荷設定を行えば3か月から4か月程度で元の水準まで肉体を押し戻すことができます。