SNSや美容系掲示板では、「このプチプラ美容液を1本使ったら凸凹クレーターが消えた」といった扇情的な投稿が散見されます。しかし、日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療ガイドラインをはじめとする医学的知見に基づけば、こうした言説は明確な虚偽・誤認です。
科学的なメスを入れるべきは、クレーター肌への効果と真相です。凹凸が生じた肌の内部では、ニキビの激しい好中球浸潤によって真皮の細胞外マトリックスが不可逆的に融解し、線維化して硬縮しています。医薬品医療機器等法(薬機法)上、化粧品や医薬部外品が作用できる範囲は原則として「角質層」までです。真皮深層の構造的欠損を化粧品の塗布だけで元通りの平坦な状態に再生することは、皮膚生理学の法則上あり得ません。
近年、表皮のターンオーバーを劇的に促進する成分としてレチノール美容液の評判が高まっています。ビタミンA誘導体であるレチノールは、表皮細胞の増殖を促して小ジワや初期の毛穴の開きを目立たなくする効果を持ち、皮膚のキメを整えることで「見かけ上の凹凸を滑らかに見せる」作用は期待できます。しかし、アイスピック型やボックスカー型の深い陥凹に対しては、いくら高濃度レチノールを塗り重ねても根本治療には至りません。自己判断で塗布過多に陥り、かえって激しいA反応(皮むけ・赤み・接触皮膚炎)を起こして新たな色素沈着を招く失敗例が後を絶たないのが現状です。