素材ダウンロードの現場では、日夜どのようなトラブルや試行錯誤が繰り広げられているのでしょうか。都内の保育園で園だより作成を担う現役保育士、および中小メーカーで販促物を一手に引き受ける広報担当者に直接取材を行いました。
世田谷区内の私立保育園で主任を務める女性(30代)は、モノクロ印刷ならではの苦悩を次のように語ります。
「毎月の『園だより』やプール開きの案内文は、予算の都合で白黒の輪転機で刷らざるを得ません。ネットで『夏の風物詩イラスト白黒』と検索して出てくる可愛らしい金魚やかき氷のイラストをそのまま貼ると、薄いグレーのトーン部分が黒く塗りつぶされ、お化け屋敷のような不気味な影になってしまうことがありました。保護者の方から『何の絵かわからない』とご指摘を受けて以来、トーンやぼかしが一切入っていない、純粋な二値化(白と黒の線画のみ)で作られた素材を厳密に選ぶようにしています」
一方、都内の食品輸入卸でマーケティングを担当する男性(20代)は、他社との差別化と炎上対策に神経を尖らせています。
「昨年、夏のキャンペーンLPで誰でも知っている有名なフリー素材サイトから『入道雲とスイカを食べる少年』のイラストを採用しました。公開後、同業他社のサマーギフトチラシと全く同じイラストがメインで使われているのを発見し、上司から『うちのオリジナル企画に見えない』と厳しく叱責されました。それ以来、夏のイラストかわいい無料素材をベースにする場合でも、色味を自社のコーポレートカラーに微調整したり、複数のパーツを自然に組み合わせるなどの加工をルール化しています」
SNSや知恵袋上でも、「商用フリーと書いてあったのに、商品を包む包装紙に使ったら著作権侵害だと警告された」「配布元サイトが突然閉鎖し、利用許諾の証明ができなくなった」といった切実な相談が多数寄せられています。手軽さの裏側にある「仕様の確認不足」が、現場を疲弊させる主因となっている実態が浮き彫りになりました。