かつて世界市場を席巻した「メイドインジャパン」の工業製品は、いまどのような立ち位置にあるのでしょうか。経済産業省の調査データや貿易統計の推移を検証すると、意外な構造変化が浮かび上がります。
経済構造実態調査(旧・工業統計)によると、日本の工業製品出荷額は全体で約330兆円から350兆円規模を維持して推移しています。テレビや白物家電、汎用スマートフォンといった最終消費財(完成品)の分野では、中国や台湾、韓国メーカーによる価格競争力と開発スピードの前に日本企業がシェアを落としたのは動かしがたい事実です。
しかし、製造現場の第一線に立つサプライチェーン担当者や大手商社幹部は次のように語ります。
「最終製品のブランドロゴが海外製に変わったとしても、スマートフォンを開ければ超微細コンデンサやCMOSイメージセンサーの多くが日本発の部品であり、それらを作る工作機械やフッ化ポリイミドなどの機能性化学材料は日本企業が世界シェアの過半を握り続けている。ものづくりの主戦場が『目に見える箱』から『目に見えないコア技術』へシフトしただけだ」
「メイドインジャパン」に対する世界の評価は、昭和・平成初期の「安くて絶対に壊れない家電・自動車」から、令和の現在では「極限環境に耐えうる超高精度マテリアル」「ナノメートル単位の加工精度を誇る基盤技術」へと、その解像度を高めています。