食べたみかんを種から育てる真実|実がならない理由と収穫への全道程

食べたみかんを種から育てる真実|実がならない理由と収穫への全道程

食べたみかんを種から育てる真実|実がならない理由と収穫への全道程の注目ポイントを丁寧に掘り下げてご紹介します。

食べたみかんの種を植えても実がつかない、あるいは結実に至らない最大の要因は、柑橘類特有の「幼若期(ジューブナイル・フェーズ)」の長さにあります。農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)をはじめとする果樹研究機関のデータによると、種子から発芽した柑橘類(実生=みしょう)が花芽をつける能力を獲得するまでには、少なくとも10年から15年以上の歳月が必要です。

ことわざに「桃栗三年柿八年、柚子の大馬鹿十八年」という言葉がありますが、みかんの実生栽培もまさにこの柚子に近いタイムスケールを要します。植物は一定の大きさに育ち、生長点の細胞分裂が規定回数を超えるまでは、どれほど肥料を与えて日当たりの良い場所で管理しても、ホルモンバランスの関係から花を咲かせることが物理的に不可能です。

さらに見落とされがちな落とし穴が「トゲ」と「樹高の暴走」です。種から育ったみかんの幼木は、外敵から身を守るために幹や枝に長さ3〜5センチメートルに及ぶ鋭いトゲを無数に発生させます。市販されているみかんの苗木にトゲがほとんど見当たらないのは、成熟した親木から穂木を採取して接ぎ木しているためです。実生の木はトゲだらけのまま上へ上へと数メートル規模で徒長し、一般家庭のベランダや室内で管理できる限界を容易に突破してしまいます。

もう一つの生物学的障壁が「遺伝の不確実性」です。みかんの種子は、受粉によって形成される交配胚(有性胚)と、母樹の組織からクローン状に増殖する珠心胚(しゅしんはい)が混在する「多胚性」を持っています。もし受粉による雑種が発芽した場合、親のみかんとは全く異なる野性味の強い、皮が厚く酸度の極端に高い果実しか実りません。種をまいて15年待ち続けた結果、ようやく実った果実が到底食べられない代物だったという結末は、実生栽培において日常茶飯事なのです。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。