千種高校のアイデンティティを語る上で避けて通れないのが、「私服通学」に代表される自由闊達な校風です。愛知県下の公立進学校の多くが厳格な校則や制服、管理型の進路指導を色濃く残すなかで、千種高校が放つ個性は異彩を放っています。
大手教育情報サイトやSNS上の評判・口コミを精査すると、在校生や保護者から寄せられる満足度の高さは驚異的です。生徒たちの生の声からは、次のような学校生活のリアルが浮かび上がります。
「校則で縛られない分、自分の意志で考えて行動する癖がついた。私服選びも最初は気合が入るけれど、夏以降は部活のジャージやシンプルなパーカーに落ち着く生徒が大半。服装でマウントを取り合うような陰湿な空気は一切ない」(普通科卒業生の手記より)
「秋の『千種祭(学校祭)』にかける熱量は尋常ではない。演劇やダンス、クラス企画のクオリティは県内屈指で、この行事の達成感を味わうために千種に入ったと言っても過言ではない」(在校生保護者の声)
しかし、この圧倒的な自由には、見過ごせない「影」が伴います。教育関係者や予備校講師の間で長年囁かれてきたのが、いわゆる「千種病(ちくさびょう)」と呼ばれる進学校特有の失速現象です。
千種高校では、小テストの強制追試や毎朝の課題提出といった強制的な学習管理がほとんど行われません。そのため、高校1年〜2年生の段階で学校行事や部活動、華やかなキャンパスライフに全エネルギーを注ぎ込んでしまい、学習習慣を失った生徒が高校3年生の初夏になって深刻な学力不足に直面するケースが後を絶ちません。強制されないと机に向かえないタイプの生徒にとっては、この「自由」が牙をむくリスクを孕んでいるのです。