結論から申し上げますと、現代の慶弔やビジネス文書において「壱萬円」と「壱万円」はどちらを用いても失礼には当たりません。ただし、両者が持つニュアンスと格式の高さには明確なグラデーションが存在します。
文字の構成を分解すると、「一」に対する旧字・大字が「壱」、「万」に対する旧字体が「萬」、「円」に対する旧字体が「圓」です。それぞれの組み合わせによって、以下のように格式の印象が変化します。
最も格式が高く伝統的な表現とされるのが「壱萬圓(也)」です。宮中行事や由緒ある家同士の結納、格式高い神事や公式式典では今なおこの表記が推奨されます。次いで一般的な慶事の祝儀袋で広く親しまれているのが「壱萬円」です。万の文字だけを旧字体の「萬」にし、円は常用漢字のままとするこの形式は、重厚感と読みやすさのバランスが取れており、現在のウェディングシーンでも標準的な選択肢となっています。
一方で「壱万円」のように、一のみを大字の「壱」にして以降を常用漢字で通す書き方も、近年の慶弔マナーでは完全に許容されています。大手冠婚葬祭互助会やブライダル関連団体の実態調査でも、受付で開封された祝儀袋の約4割が「壱万円」表記であり、マナー違反として問題視されるケースは皆無です。
気になる「壱萬圓也」の末尾に付く「也(なり)」の意味ですが、これはかつて「銭」や「厘」といった補助通貨が存在した時代に、「これ以下の端数はありません」と宣言するための改ざん防止措置でした。銭単位の貨幣が日常から姿を消した現代では、原則として「也」を付けなくても何ら非礼には当たりません。むしろ付けることで「伝統的で堅牢な印象」を与える装飾的役割へと変化しています。