「なぜ、自分の意思とは裏腹に刺激が止まらなくなってしまうのか」という疑問に対し、近年の神経解剖学および画像診断の進歩によって、骨盤内および脊髄神経ネットワークの微小な破綻が解明されてきました。単一の原因ではなく、複数の神経・血管・内分泌異常が重なり合って生じることが判明しています。
臨床現場において特に重視されているのが、陰部神経痛(Pudendal Neuralgia)との密接な関連性です。骨盤底を通る陰部神経が、過度な筋肉の緊張や靭帯、骨盤骨折、長時間の座り仕事などによって物理的に圧迫・絞扼されると、脳へ向けて誤った興奮シグナルが発信され続けます。これにより、脳は「刺激を受けている」と誤認し、局所の血管を拡張させ続けてしまうのです。
さらに、仙骨神経根に発生する髄膜嚢胞の一種であるタロブ嚢胞(Tarlov Cyst)が神経を刺激しているケースや、下肢がむずがゆく静止できなくなるレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)との中枢神経系での併発も多数確認されています。ドパミン作動性経路やGABA(ガンマアミノ酪酸)などの神経伝達物質のバランス破綻が、知覚閾値を著しく低下させている可能性が指摘されています。
加えて見逃せないのが、抗うつ薬(特にSSRI/SNRI)の服用開始時や急激な減薬・断薬に伴う離脱症候群、さらには更年期や閉経に伴うエストロゲン濃度の激変です。ホルモン環境の急激な変化が局所血流の自己調節機能を狂わせる引き金となることが、医学文献でも報告されています。