「過去問さえ解いていれば合格できる」という神話が崩壊した背景には、試験実施機関である安全衛生技術試験協会が年2回(4月・10月)行っている公表問題の特殊な仕組みがあります。ここに、受験生が陥りやすい最大の情報バイアスが存在します。
安全衛生技術試験協会が公表している問題は、過去に実際に出題された問題の一部を抜粋して開示したものに過ぎず、毎月各地のセンターで実施されている全ての試験問題を網羅したものではありません。試験元は膨大な問題プールを保有しており、定期的に選択肢の表現を変更したり、新規の判例や行政通達のエッセンスを注入した「新傾向問題」をプール内に投入しています。
市販の過去問題集や無料の学習アプリの多くは、この限られた公表問題をベースに作成されています。そのため、公表問題をどれほど反復学習して見かけ上の正答率を100%に近づけたとしても、それは「過去に公表された特定の表現を覚えた」に過ぎず、本番で少し角度を変えて問われた瞬間に太刀打ちできなくなります。これが「過去問を何周もしたのに本番で通用しなかった」と嘆く受験生が量産される決定的なカラクリです。