端的に答えを示すと、「表情がかたい」を漢字で書き表す際の正解は「表情が硬い」です。公文書、新聞・出版業界の統一基準、さらには主要な国語辞典のすべてにおいて、この表記が標準として定められています。
この使い分けを瞬時に判断するための決定的な基準が「対義語(反対語)への置き換え」です。日本語の「かたい」という訓読みを持つ漢字は、それぞれ対になる概念を比較することで、本来のニュアンスが鮮明に浮かび上がります。
顔の筋肉がこわばっている状態を解除したとき、その表情は「ゆるい(緩い)」でも「もろい(脆い)」でもなく、「やわらかい(軟らかい)」状態へと戻ります。「表情が硬い」の対義語が「表情が和らぐ」「軟らかい表情」である事実こそが、石や金属のように柔軟性を失った状態を表す「硬」の字を当てる最大の根拠です。
文化庁が取りまとめる常用漢字かたい使い分けの指針や、一般社団法人日本新聞協会が発行する『新聞用語集』においても、「表情が硬い」「態度が硬い」「硬い文章」といった人間の状態や表現のぎこちなさには、例外なく「硬」の用字が指定されています。「表情が固い」と書いてしまうと、文章に精通した校閲者やビジネス相手からは「基礎的な用字用語の分別ができていない」と見なされる要因になります。