リーンが爆発的に知られるようになった背景には、米国のサザン・ヒップホップ(南部ラップ)カルチャーの存在があります。1990年代のテキサス州ヒューストンを発祥とし、音楽プロデューサーのDJスクリューが提唱した、楽曲のテンポを極端に遅くする「チョップド&スクリュード」と呼ばれる音楽手法は、リーンを摂取した際の酩酊感や時間の感覚が引き延ばされる感覚を表現したものとして広まりました。
その後、2000年代から2010年代にかけて、リル・ウェイン、フューチャーなどの大物ラッパーが歌詞やミュージックビデオ、SNSで日常的にリーンを飲む姿を誇示。「成功者の嗜み」「ストリートのステータスシンボル」という歪んだイメージが定着してしまいました。
その代償はあまりにも大きく、DJスクリューをはじめ、ピンプ・C、ビッグ・モー、さらには新世代の牽引者だったジュース・ワールド(Juice WRLD)など、数々の才能あふれるアーティストがオピオイド系薬物の過剰摂取によって若くして命を落としています。カルチャーとしての「格好良さ」の裏には、取り返しのつかない死の連鎖が刻まれているのが現実です。