ネット上の言説やSNSの書き込みにおいて、しばしば見受けられる決定的な誤解があります。それは「『オニギシ』は横山裕の母親が亡くなった直後に、追悼のために書き下ろされた楽曲である」という言説です。しかし、客観的な記録と時系列を照らし合わせると、この認識は事実と異なります。
実際のタイムラインを整理すると、以下の通りです。
- 2004年〜2005年:コンサートの舞台上で三兄弟ユニットとして『オニギシ』が初披露され、2006年にアルバム『KJ1 F・T・O』初回限定盤に音源収録される。
- 2010年5月:横山裕のソロコンサートツアー期間中、最愛の実母が50歳という若さで急逝。
つまり、『オニギシ』は母親の死を悼んで作られたレクイエムではなく、「母親が健在であった当時に、照れ隠しをしながら贈られた生前のラブレター」でした。横山自身、母親が実際にライブ会場に足を運び、この曲を客席で聴いて喜んでくれていたことを後に明かしています。
生前に手渡された感謝のメッセージだったからこそ、2010年の急逝という過酷な現実を経て、この楽曲の持つ意味合いはさらに深く、切実なものへと変化していきました。「生きているうちに伝えられた感謝」と「もう二度と直接届けることのできない切なさ」が同居している点こそが、この楽曲が放つ独特の哀惜と温もりの源泉なのです。