相撲ファンの間で長年議論の対象となり、ネット上でも誤解が絶えないのが「外国人枠」と「年寄名跡の襲名条件」を巡るルールです。
外国出身力士枠の厳格な制限
日本相撲協会は、伝統文化の保護と過度な外国人偏重を防ぐため、「1部屋につき外国出身力士は1名まで」という厳格な規定を設けています。過去には総数制限の時代もありましたが、2002年以降段階的に制限が強化され、2010年以降は原則として「1部屋1人」に固定されました。
このため、現在では「強ければ何人でもスカウトできる」状態ではありません。各相撲部屋は、鳥取城北高校などの相撲強豪校に留学している極めて有望なモンゴル人留学生を厳選し、たった1つの貴重な外国人枠を誰に託すかを慎重に見極めています。つまり、現在幕内に定着しているモンゴル力士は、母国の予選と日本の高校相撲、そして相撲部屋の厳しい選別をすべて勝ち抜いた「数百人に1人の超エリート」に過ぎないのです。
日本国籍取得(帰化)という高きハードル
土俵上で輝かしい実績を残したとしても、引退後に日本相撲協会に残り「親方」として弟子を指導するためには、「日本国籍を有していること」が規約上必須と定められています。
しかし、モンゴルの国籍法は二重国籍を認めていません。日本国籍を取得するということは、生まれ育った母国の国籍を完全に離脱することを意味します。母国で国民的英雄として称賛される力士にとって、国籍を捨てる決断は「裏切り者」と批判されるリスクを伴う精神的重荷です。朝青龍が日本国籍を取得せず引退後に母国へ戻った一方、白鵬、鶴竜、照ノ富士らは葛藤の末に帰化を選択しました。彼らが日本国籍を取得したのは、単なる名誉欲ではなく「自分が愛し育ててもらった日本相撲の恩義に報い、後進を育てる」という覚悟の証でもあります。
白鵬と宮城野部屋の現在
親方となった後の道も平坦ではありません。大横綱・白鵬が襲名した宮城野部屋を巡っては、弟子の不祥事に対する監督責任を問われ、一時期部屋が閉鎖され伊勢ヶ濱一門の預かりとなる異例の事態に発展しました。土俵上では無敵を誇った大横綱であっても、日本の伝統的な「師匠としての指導力」「相撲協会の慣習への融和」という面では厳しい試練に直面しています。2026年現在も、指導体制の抜本的見直しと再建に向けた模索が続いており、外国出身の親方が部屋を統括する難しさを浮き彫りにしています。