整形外科の臨床現場において、腰痛の約85%は原因を特定しにくい非特異的腰痛とされています。しかし、残る約15%の中には、背骨自体の器質的疾患だけでなく、悪性腫瘍や感染症、腹部大動脈瘤などの命に関わる重篤な病態(レッドフラッグ)が含まれています。
筋肉性・骨格性の一般的な腰痛と、がんが関与する腰痛の最大の違いは、「動作との連動性」と「痛みの持続パターン」です。一般的な腰痛は前屈みになったり重い物を持ったりしたときに痛みが強まり、横になって楽な姿勢をとると和らぐ傾向があります。これに対し、がんによる腰の痛みは、姿勢を変えても痛みが軽減しない「安静時痛」や、就寝中に鈍く疼くような「夜間痛」が顕著に現れる特徴を持ちます。
日本整形外科学会の診療ガイドラインでも明記されているように、「50歳以上で発症した初発の激しい腰痛」「がんの既往歴がある方の腰痛」「原因不明の体重減少を伴う腰痛」は、画像診断や血液検査を含めた精査が必須となります。