夏祭りの歌を語る上で欠かせない金字塔が、1990年にJITTERIN'JINNがリリースし、2000年に北海道出身のガールズバンド・Whiteberryがカヴァーして大ヒットを記録した『夏祭り』です。オリコンチャート上位を記録し、NHK紅白歌合戦への出場を果たしたWhiteberry版は、リリースから四半世紀以上が経過した現在でも各種ランキングで圧倒的な首位を争い続けています。
音楽プロデューサーや当時の関係者が語る証言によれば、原曲の持つスカ・パンク特有の裏拍のリズムに、Whiteberryのボーカル・前田由紀の力強くもあどけないハイトーンボイスが乗ることで、唯一無二のドライブ感が生まれました。和太鼓のリズムを想起させる強烈なドラムフィルインから始まるイントロは、聴き手を瞬時に夜店の雑踏へと連れ去る力を持っています。
しかし、この楽曲が真に人々の胸を打つのは、その歌詞に描かれた切ない別れの情景です。「君がいた夏は 遠い夢の中 / 空に消えてった 打ち上げ花火」というサビのフレーズが象徴するように、この歌は現在の楽しい逢瀬を歌っているのではなく、すでに失われてしまった過去の恋と、二度と戻らないあの夏を回想する構造になっています。
浴衣の襟元を気にしながら歩く横顔、神社境内の暗がり、そして光っては消える花火の残像。鮮明な視覚的描写が疾走するビートに乗って駆け抜けるからこそ、聴き手は自らの記憶にある甘酸っぱい後悔や郷愁を重ね合わせ、胸を締めつけられるのです。