この価値観の地殻変動を決定づけたのが、テレビ朝日系でレギュラー放送されたバラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』です。山里亮太とともにMCを務めた田中みな実と弘中綾香は、日常に潜む「あざとい言動」を冷笑するのではなく、その技術と心理戦をエンターテインメントとして解体・称賛しました。
この番組が果たした最大の功績は、「あざとい」という言葉をネガティブな告発から「高度なコミュニケーションスキル」へとアップデートした点にあります。番組内で語られる処世術や恋愛の駆け引きは、単なる色目ではなく、相手を心地よくさせながら自己の目的を達成する洗練された対人心理テクニックとして受容されました。
現在の民放各局において、アナウンサーに求められる資質は単なる原稿読みの技術(アナウンススキル)にとどまりません。番組の意図を瞬時に汲み取り、自らのパーソナリティを記号化して投げ込める「タレント力」と、炎上を回避しながら共感を獲得する「デジタルリテラシー」の双方が求められる過酷なサバイバル環境となっています。