本所吾妻橋駅から三ツ目通りを少し南下した東駒形の一角。周囲は穏やかな下町の街並みですが、そこだけ異様な熱気と人だかりが生まれています。店先に掲げられた「小さな魚がし」の看板通り、店内は決して広くありません。カウンター席とテーブル席を合わせても20席前後のコンパクトな空間です。それにもかかわらず、なぜこれほどまでに人を引き寄せるのでしょうか。
最大の理由は、運営母体が市場の歴史を知り尽くした「まぐろ仲卸(野口水産)」直営である点に尽きます。一般的な海鮮料理店では、仲卸から仲買人、二次卸などを経由して食材を仕入れるため、中間マージンと輸送時間がどうしても発生します。しかし同店の場合、目利きが競り落とした最上質のまぐろや近海鮮魚が、ダイレクトに店舗の厨房へと届きます。
「仲卸直営だからこそ、他店では3,000円以上するような上質な中トロや赤身を、日常使いの価格帯で豪快に盛ることができる」。市場関係者の間でも、同店のコストパフォーマンスは一種のベンチマークとして語られます。中間流通をカットした分を価格とポーション(盛り)に還元する還元主義こそが、連日途切れない大行列を生み出している構造的要因です。