手稲エリア屈指の知名度を誇る大型店舗がなぜ撤退に至ったのか。単なる一店舗の売上問題にとどまらず、外食産業全体を揺るがす構造的要因が浮き彫りになっています。
第一の要因は、原材料価格およびエネルギーコストの急激な上昇です。2024年以降も続く牛肉・豚肉の輸入価格高騰、米や食用油などの基礎食材の値上がり、さらに大型店舗特有の膨大な空調・ロースター維持にかかる電気・ガス料金の負担は、低価格食べ放題モデルの利益構造を限界まで圧迫しました。セルフバイキング形式は仕込み量が多く、食材ロスのコントロールが難しいため、インフレ下での採算維持が極めて厳しいビジネスモデルへと変化していた背景があります。
第二に、外食市場における競争環境の激変が挙げられます。「焼肉きんぐ」に代表されるテーブルオーダーバイキングチェーンが急速にシェアを拡大し、タッチパネル注文と配膳ロボットを組み合わせた高効率なオペレーションを確立しました。客が自ら料理を取りに行くセルフ形式のエンタメ性は根強い人気を持つ一方で、「席を立たずに高品質な肉を楽しみたい」というタイムパフォーマンス(タイパ)重視の消費者層の流出を招いたことは否めません。
第三に、株式会社江戸一による全国的な店舗網の再編(スクラップ&ビルド戦略)です。同社は近年、不採算拠点の整理と有望立地へのリソース集中を進めており、老朽化した大型ロードサイド店舗の維持更新コストと将来的な収益性を天秤にかけた結果、契約満了や事業ポートフォリオ見直しの一環として閉店の決断が下されたとみられます。