焼き鳥の常識を覆したと言われる池川氏の技術、その核心にあるのが「強火の近火」と呼ばれる火入れの技法だ。通常の焼き鳥店よりもはるかに強い火力を用い、炭火のすぐ至近距離で一気に肉を焼き上げる。表面を一瞬で焼き固めることで、肉内部の旨味と水分を閉じ込め、噛みしめた瞬間に溢れ出す圧倒的なジューシーさを実現しているのだ。
当然、焦げと火通りの見極めは紙一重。一秒の遅れが失敗につながる極限の緊張感のなか、池川氏は休むことなく団扇をあおり、串を返し続ける。その所作には迷いが一切ない。職人の長年の勘と、肉の状態に研ぎ澄まされた集中力が生み出す一串は、まさに芸術の域に達している。