一方で、SNSやレビューサイトを検索すると必ず突き当たるのが「買って数日で止まった」「時間が信じられないほどズレる」というネガティブな評価です。こうした耐久性トラブルには、製造原価と構造設計に起因する明確な物理的理由が存在します。
第1の理由は、心臓部である水晶振動子(クォーツ)の選別グレードです。大手時計メーカーのセイコーやシチズンなどの製品には、温度変化に強く発振周波数が安定した高品質な素子が組み込まれます。しかし、100円から300円で卸される格安ムーブメントでは、歩留まり検査の許容範囲が広く設定されています。その結果、室温が急激に下がる真冬の寝室や、直射日光が当たる窓辺などでは、周波数に乱れが生じて月に1分〜2分以上の時間ズレが現実として発生してしまうのです。
第2の理由は、内部ギア(歯車)の材質と耐衝撃性です。コストを極限まで削減するため、歯車軸受の金属ブッシュは省略され、ポリスチレンやポリアセタールなどの樹脂成形部品が直接噛み合っています。ベッドサイドからフローリングへ一度でも落下させると、歯の噛み合わせがズレたり微小なバリが噛み込んだりして、針が特定の角度(特に重力に逆らって秒針が上昇する45分〜60分の位置)で引っかかり停止する現象を引き起こします。
そして第3の盲点が、使用する乾電池の選定ミスです。取扱説明書の極小文字を注意深く読むと、多くのアナログ時計に「単3マンガン乾電池をご使用ください(アルカリ乾電池使用不可)」と記されています。
時計のムーブメントは、ごく微弱な電流を一定に消費し続ける設計になっています。ここに初期電圧が高く大電流を流せるアルカリ乾電池を挿入すると、回路に過負荷がかかってコイルが異常発熱したり、微小な火花放電によって接点が摩耗したりして短寿命化を招きます。また、長期間放置されたアルカリ電池の液漏れによって基板が腐食する事例も後を絶ちません。100均の時計にはマンガン乾電池を装填し、約半年から1年を目安に定期交換することが、故障を防ぐ最大の鉄則です。