久保本家酒造の歴史は江戸時代、元禄の世にまで遡る。醸造の街として栄えた奈良・宇陀の地で、300年以上にわたって酒造りの灯を守り続けてきた。この蔵が誇る名酒「睡龍」や「生酛のどぶ」の骨格を成しているのが、古式ゆかしい生酛造りだ。
生酛造りとは、空気中に存在する天然の乳酸菌を取り込み、強い酵母を時間をかけて育てる伝統技法を指す。現代主流の速醸酛のように醸造用乳酸を添加しないため、醪(もろみ)の育成には倍以上の手間と日数がかかる。しかし、こうして生まれた酒は腰が強く、長期間の熟成に耐えうる強靱な酸と旨味を蓄える。仕込みたては時に鋭く骨太な酸が前面に出るが、熟成を経ることでその角が丸くなり、驚くほど艶やかな深みへと変貌を遂げるのだ。