契約書において最も紛争が発生しやすいのが「特約条項」です。定型化された印刷条項よりも、文末に追記される特約条項が法的に優先される原則があるため、ここに盛り込まれた一行の文言が数千万円の取引を根底から覆す威力を持っています。
その代表格が「住宅ローン特約(融資利用の特約)」です。住宅ローン審査に落ちた場合、買主はペナルティなしで無条件に手付金全額の返還を受けて白紙解除できる権利ですが、ここに「解除条件」の定義をめぐる致命的な落とし穴が存在します。契約書上の解除期限を「ローン承認取得期日」と「契約解除期日」で曖昧に設定していたり、申請先金融機関を限定明記していなかったりすると、本審査否決時に「他行で再申請すべきだ」「期日を過ぎたため手付放棄での解除になる」と主張され、手付金を全額没収される深刻なトラブルに直面します。
さらに、買い替え時に用いられる「物件引渡し猶予」の経緯と条件設定も火種になりがちです。売主が新居への引越しを完了するまでの数日間、残代金決済後も物件に留まることを認める猶予特約を結ぶ場合、「猶予期間中の固定資産税や管理費の負担」「期間経過後の損害賠償額」「万が一の火災時の危険負担」を詳細に取り決めておかなければ、明渡し遅延による泥沼の訴訟へ発展します。