耳垢の性状は、皮膚の汚れや手入れの頻度によって決まるものではありません。人間の耳垢には、乾燥した「乾性耳垢(粉耳)」と、粘り気のある「湿性耳垢(飴耳・猫耳)」の2種類が存在し、その違いは第16番染色体上に存在するABCC11遺伝子の型によって生まれつき決定づけられています。
耳の中(外耳道)には、皮脂腺のほかに「アポクリン汗腺(耳道腺)」と呼ばれる特殊な汗腺が存在します。ABCC11遺伝子の塩基配列が「G(グアニン)」を持つタイプではアポクリン汗腺の機能が活発になり、脂質やタンパク質を豊富に含んだ分泌液が過剰に分泌されます。これが剥がれ落ちた角質と混ざり合うことで、しっとりとした軟性耳垢が形成されるのです。
遺伝の仕組みとしては湿性が顕性(優性)遺伝、乾性が潜性(劣性)遺伝となります。両親のどちらか一方からでも湿性の遺伝子を受け継ぐと耳垢が湿るため、家系的な要素がダイレクトに反映されます。
世界的な統計を見ると、白人や黒人の90%以上が湿性耳垢であるのに対し、東アジア人は乾性耳垢が圧倒的多数を占める特殊な地域です。日本国内における飴耳の日本人割合は約16%前後とされています。ただし地域差が大きく、先住民族の血を色濃く残す北海道や南西諸島では湿性の割合が高く、渡来人の影響を強く受けた近畿・瀬戸内地方では10%前後まで下がるなど、日本列島の歴史的ルーツとも密接に結びついています。