裏ワザを試しても「皮が途中でちぎれてまったく滑らかに剥けない」という事態に直面することがあります。この桃の皮が剥けない理由は、技術の巧拙ではなく、果実の成熟度合いと保管環境にあります。
樹上から収穫された直後や追熟が不十分な桃は、ペクチンがカルシウムなどと強固に結合した不溶性の状態を保っています。細胞壁がガッチリと皮と結びついているため、外側から引っ張っても果肉ごと引きちぎれてしまいます。また、購入直後に冷蔵庫の野菜室へ入れてしまうケースが目立ちますが、これは大きな誤りです。桃は冷気に晒されると低温障害を起こし、追熟を司るエチレンの生成が止まるばかりか、水分が抜けて果肉がゴムのように硬化してしまいます。
失敗を防ぐための鍵となるのが、正しい桃の追熟と食べ頃の見極め方です。桃を購入したら、まずは風通しの良い冷暗所(室温20〜25℃前後)に常温で保管します。食べ頃のサインは以下の3つの変化で客観的に判断できます。
第一に「香り」です。顔を近づけなくても部屋全体に芳醇で甘い香気成分(ラクトン類)が漂い始めたら完熟の合図です。第二に「地色」の観察です。ヘタ周辺の緑色の青みが抜け、透明感のある乳白色やクリーミーな黄色へと移行しているかを確認します。第三に「感触」です。ヘタの周囲を指の腹でそっと触れた際、耳たぶのような微かな弾力を感じれば追熟は完了です。食べる2〜3時間前に冷蔵庫へ移して軽く冷やすことで、果汁の甘みと皮離れの良さを最高潮の状態で引き出すことができます。