インターネット上では、「100画を超える最強の漢字」として奇抜な画像が拡散されるケースが後を絶ちません。しかし、情報リテラシーの観点から注意すべきなのは、「画像として描かれた記号」と「文字体系として成立している漢字」の決定的な違いです。
ネット上で話題になる超多画数文字の多くは、以下のいずれかに分類されます。
- 道教の符籙(ふろく):悪霊退散や招福を祈願するために、複数の漢字や呪文を重ね書きした護符。文字というよりは図像・暗号。
- 個人の創作字(幽霊文字の類):部首を無理やり四方に連結させて画数を増やす目的で作られたインターネット・ミーム。
- 方言字・業界字:特定の地域や限られた職能集団の中でのみ通用した文字。
国際的な文字コード規格であるUnicode(ユニコード)において、文字として正式に登録されるには、歴史的な文献での用例(典拠)が厳しく審査されます。「ビャン」の漢字も、長年の審査を経てようやく2026年の「Unicode 13.0(CJK統合漢字拡張G)」に「𰻞(U+30EDE)」「𰻝(U+30EDD)」として正式収録されました。
つまり、いかに画数が多くとも、Unicodeに未収録の文字はスマートフォンやPCのOS上で標準表示できず、テキストデータとして検索や送受信を行うことができません。「見た目の画数」だけでなく、「情報社会でデータとして機能しているか」という視点を持つことが、ネットの誇張情報に惑わされないための重要な判断基準となります。