厚生労働省の職業紹介データや主要求人媒体を分析すると、事務職全体の有効求人倍率が0.3〜0.4倍前後と超買い手市場であるのに対し、IT関連職種は2倍を超える人手不足が続いています。この需給ギャップを埋める存在としてIT事務の募集は活発ですが、ネット上では「やめとけ」という警告が絶えません。その背景には、派遣形態や雇用契約に起因する現場特有の3つのギャップが存在します。
第1の理由は、「客先常駐(SES)における案件ガチャと単純作業のループ」です。未経験歓迎を謳うIT事務求人の多くは、特定派遣やSESと呼ばれる雇用形態をとっています。自社で研修を受けた後、大手SIerや通信会社などのクライアント先に派遣されますが、配属先によっては「朝から晩まで指定のボタンをクリックして画面崩れがないか確認するだけのテスト作業」や「届いた申請書とデータベースの照合のみ」を延々と命じられるケースがあります。これではスキルが身につかず、キャリアアップの展望が見出せません。
第2の理由は、「実質的なコールセンター業務への配属」です。求人票には「IT事務・サポート業務」と記載されていながら、実態はインターネット回線やWebサービスのテクニカルサポート窓口であり、鳴り止まないクレーム電話に対応させられる事例が後を絶ちません。取材に応じた元IT事務の20代女性は、「オフィスで静かにカタカタPCを打つイメージで入社したのに、初日からヘッドセットを着けられ、怒号を浴びせられる日々だった」と当時の苦悩を吐露しています。
第3の理由は、「専門用語への適応負荷と自己学習の重圧」です。現場では「サーバー」「API」「IPアドレス」「デプロイ」といったIT用語が当たり前に飛び交います。自ら進んで調べる姿勢がないと、エンジニアの依頼内容を正確に把握できず、周囲に迷惑をかけて居場所を失ってしまう過酷さがあります。