初夏の霧島を訪れた人々が思わず息をのむのが、荒々しい火山岩の斜面をびっしりと覆い尽くす赤紫色の絨毯です。結論から述べると、霧島の山肌を鮮やかな紫紅色に染め上げる主役は、ツツジ科ツツジ属の高山植物ミヤマキリシマ(深山霧島)です。明治の植物学者・牧野富太郎博士が霧島山で発見し命名したこの固有種は、過酷な火山性ガスや厳しい冬の寒風、酸性土壌に耐え抜いて岩肌にしがみつくように自生します。一般的なツツジに比べて花も葉も2〜3センチメートルと小ぶりですが、1つの株に無数の小花が密集して咲くため、満開時には山肌全体が紫のベルベットを敷き詰めたかのような圧倒的なスケール感を生み出します。
一方、山麓の霧島市花の名所として春の観光を牽引しているのが、和気神社の隣に位置する和気公園で見られる藤(フジ)です。こちらは高山植物の野性味とは対照的に、幾重にも重なる優美な紫の房が初夏の風に揺れる優雅な景観を作り出します。かつて岡山県和気町から友好の証として贈られた23種類・約100本の藤が棚一面に広がり、紫、紅紫、白のグラデーションを描きます。
さらに、庭園や市街地で見かけるキリシマツツジの紫系品種や、日陰の岩場にひっそりと咲くツクシシャクナゲなど、霧島エリアは標高や環境によって異なる「紫の花」がリレーのように咲き継ぐ稀有な地域です。「霧島 紫色の花 名前」を検索する旅行者の多くは、このミヤマキリシマか和気公園の藤のいずれかに心を奪われているケースがほとんどです。