フライドチキンを語るうえで避けて通れないのが創業者カーネル・サンダースの秘密です。彼が1930年代の米ケンタッキー州コービンにある小さなダイナーの厨房で編み出した「11種類のハーブ&スパイス」の配合比率は、外食産業史上最も厳重に保護された企業秘密(トレードシークレット)として知られています。
米ルイビルのグローバル本社金庫に保管された直筆レシピ原本は、2名の幹部しかアクセス権を持たず、暗号化コードと複数の生体認証によって守られています。調合プロセスも巧妙に分断されており、米国内の別々のスパイス製造工場で半分ずつブレンドされた後、第3の拠点で最終混合される徹底ぶりです。
過去に親族の手記やメモから「レシピ漏洩」と騒がれた騒動が幾度となく発生しましたが、科学的な官能検査ではいずれも本物の味と完全一致しませんでした。味の決め手はスパイスの配合比率だけでなく、最高15psi(約1気圧強)の超高圧で一気に熱を通す専用の圧力釜調理にあります。180度近くの高温を保ちつつ水分蒸発を防ぎ、肉汁を内部に閉じ込めながらスパイスを繊維深くまで浸透させる技術は、民生用の調理器具では物理的に模倣が不可能です。これこそが、数多のクローンレシピが存在しながらも本家の地位が揺らがない最大の理由です。