「お札に落書きをしたら犯罪」という認識は広く浸透していますが、法規を厳密に読み解くと意外な事実が浮かび上がります。日本の法律である貨幣損傷等取締法の第1条では、「貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない」と規定されています。しかし、この法律が対象とする「貨幣」とは、500円玉や100円玉といった硬貨(金属板)のみを指しており、日本銀行が発行する「日本銀行券(紙幣)」は含まれていません。
そのため、純粋に紙幣へ落書きした行為そのものを直接処罰する単独規定は現行法に存在しないのが実態です。しかし、だからといって完全に自由というわけではありません。以下の表は、紙幣と硬貨にまつわる法的な位置づけと損壊行為に対する主な適用法条の違いです。
他人が所有するお札に勝手に落書きをした場合は刑法第261条の器物損壊罪に該当しますし、額面数字を書き換えて機械や店員を騙そうとすれば詐欺罪や通貨変造罪という極めて重い刑罰の対象になります。「紙幣だから何を書いても大丈夫」という誤認は禁物です。