事件後、自宅に閉じこもり「死ぬことすら考えた」という渡辺新氏を暗闇から救い出したのが、稀代の天才芸人・ビートたけし氏でした。父親同士の旧知の仲という縁もありましたが、たけし氏の対応は世間の常識を覆すものでした。
なべやかん ビートたけしの師弟関係は、たけし氏が放った「お前、替え玉受けてラーメン屋の替え玉なら怒られなかったのにな」という強烈なブラックジョークから始まりました。世間から総叩きに遭っていた罪人をタブー視するのではなく、笑いの文脈に引きずり込むことで、青年の背負った十字架を軽くしたのです。
そして命名された芸名が「なべやかん」でした。父・なべおさみの「なべ」に、お湯を沸かす「やかん」を掛け合わせ、さらに「替え玉を茹でる道具」という意味を暗に含ませたこの命名によって、彼はなべやかん たけし軍団の一員として芸能界での再スタートを切ることとなりました。恥ずべき過去をあえて芸名として背負わせることで、逃げずに生きる覚悟を与えた師匠の計らいは、芸能史に残る名エピソードとして語られています。