バイオ医薬品であるフィブラストスプレーは、その取り扱いに極めてシビアな手順が求められます。一般的な軟膏のように「ただ患部に塗ればよい」という代物ではありません。正しい調剤手順とフィブラストスプレーの使い方を守らなければ、タンパク質が変性し、期待される薬効が失われてしまいます。
投与前の準備として、まず付属の溶解液を凍結乾燥粉末が入ったバイアルに全量注入し、泡立てないよう静かに回転させて溶解します。付属のスプレーノズルを装着した後は、以下のルールを徹底する必要があります。
- 投与距離と角度:ノズルを創面から約5cm離した位置で垂直に構え、創傷面積に応じて規定回数(円形であれば1回噴霧で直径約6cmの範囲をカバー)をプッシュします。
- 創面の事前処置:黒色や黄色の壊死組織(ネクローシス)が存在する状態では、いくら増殖因子を吹きかけても効果を発揮しません。外科的デブリードマンや洗浄によって、あらかじめ創面を清潔かつ新鮮な状態にしておくことが絶対条件です。
- 使用頻度:原則として1日1回の噴霧を行い、噴霧後は乾燥を防ぐために創傷被覆材(ハイドロコロイドや軟膏塗布ガーゼ等)で適切に保護します。
特に管理面で最大の注意を払うべきなのが、フィブラストスプレーの保存方法と溶解後の使用期限です。溶解前の乾燥粉末バイアルは室温保存が可能ですが、一度溶解した薬液は必ず「10℃以下の冷所(冷蔵庫)」で遮光保存しなければなりません。そして、溶解後の使用期限は「7日間(1週間以内)」と厳格に定められています。1週間を過ぎた残液は、雑菌繁殖や成分失活を防ぐため、迷わず破棄する必要があります。