群馬県内外から訪れる来園者が一様に驚くのが、桐生が岡動物園の入園料が完全無料である点です。一般的な地方動物園でも大人数百円から千数百円の入場料を徴収するのが通例ですが、同園ではチケット売り場そのものが存在しません。この異例の運用が成立している背景には、桐生市独自の歴史的・財政的背景が存在します。
第1の理由は、「市民の保健休養と情操教育への貢献」という公教育精神の堅持です。1953年の開園以来、桐生市は「すべての子どもたちに動物と触れ合う機会を平等に提供する」という方針を一貫して掲げてきました。教育委員会や都市建設部の管理のもと、福祉・教育行政の一環として一般会計から管理維持費が充当されています。
第2の理由は、かつて日本屈指の織物産業都市として繁栄した歴史的資産と市民還元です。「西の西陣、東の桐生」と称された桐生市では、近代化の過程で地域経済を支えた先人たちの遺産を市民へ還元する都市計画が進められました。公園の敷地そのものが歴史的な公有地を活用して整備された経緯があり、過度な収益化を求めない独立採算とは異なる行政モデルが確立されています。
第3の理由は、遊園地や周辺観光資源との回遊性による地域経済効果です。動物園を無料のキラーコンテンツとして位置付けることで、隣接する桐生が岡遊園地の利用促進、さらには市内の飲食店や商店街への観光客誘引を図る「ハブ型集客戦略」が機能しています。単体の入場料収入に頼るのではなく、地域全体の活性化に寄与させる設計がなされています。