雪代巴という女性の存在なしに、緋村剣心の真の姿を語ることはできない。剣心の頬にある「十字傷」は、最初から一度につけられたものではなかった。一つ目の傷は、京都で剣心が暗殺した京都所司代の町方・清里明良が、死に際に見せた執念によって刻まれたものだ。そして、その清里こそが、巴の祝言を間近に控えていた婚約者だったのである。
集英社発行の原作コミックで描かれたこの過去は、あまりにも残酷だ。婚約者を奪われた巴は、悲しみのどん底に突き落とされた。その後、二つ目の傷が刻まれる瞬間に至るまで、二人は時代の渦に呑み込まれるようにして巡り会う。剣心が背負う罪の重さと、巴が抱える葛藤が交錯した結果として完成したのが、あの象徴的な十字傷に他ならない。