彼のキャリアにおける決定的な転機となったのが、北野武監督が手掛けた歴史大作映画『首』だ。戦国時代のドロドロとした欲望と愛憎が渦巻く極限の世界観の中で、寛一郎が見せたパフォーマンスは観客の記憶に強烈な爪痕を残した。単なる若手キャストの枠を超え、狂気と哀愁が入り交じる複雑な感情線を圧倒的な説得力で表現してみせた。
時代劇という誤魔化しのきかないジャンルにおいて、彼の立ち姿や所作、そして眼光の鋭さは際立っていた。大御所俳優たちがひしめく重厚な空間でも決して呑まれることがない。名匠のもとで鍛え上げられた演技力は、彼が単なる二世・三世の枠組みを完全に突破したことを証明してみせた。